top of page

睡眠不足の死亡リスク

睡眠不足が、日中のパフォーマンスを低下させることは周知の事実です。しかしながら、睡眠不足の蓄積が、心身にあたえる大きな影響については見逃されがちです。例えば、強制的に不眠にすると生物は全て死んでしまうという実験結果もあります。平日と休日の睡眠時間に大きな差がある方は、まず睡眠不足ですので注意が必要です。


睡眠不足の危険性

 

過労が直結する睡眠不足という実態


過労死ということが社会での問題となってからも、まだ本質的な改善には至っていません。

その背景には長時間の労働を厭わない人にとって、他人よりも優れた成績を残すことが自身の存在価値と考える社会風潮が根強いからです。けれどもすこし冷静に考えてみてください、私たちはいったいなにのために働いているのでしょうか、まずは生活をするために働いています。どれだけ優れて存在価値があっても、死んでしまっては労働の目的である生活をすることは叶いません。


長時間労働は脳と身体を疲弊させる


長時間の労働によって、有限である1日の24時間のうちから削られるのはどのような時間でしょうか。脳と身体のメンテナンスと調整のために不可欠な睡眠のための時間です。趣味の時間が削られるだけならばいいのですが、生理的にも不可欠な睡眠という時間が削られてしまっているのが実態です。


ある産業医の話によると、大体月80時間以上の時間外労働を行っている人の9割以上は、睡眠時間が連日5時間を切っているという調査結果があるようです。睡眠時間は個性や年齢や季節によっても変わるものですが、5時間というのは一般的な体質だとしたらまともなパフォーマンスができない状態だと考えられます。



6時間睡眠を2時間続けるとパフォーマンスは大きく低下


2003年にペンシルベニア大学とワシントン大学において行われた睡眠制限実験では「6時間睡眠を2週間続けると集中力や注意力は2日徹夜した状態とほぼ同じレベルまで衰退する」という結果が発表されています。2日徹夜をした状態となると、誰しもが疲れや眠気で頭が働かないという普段とは全く違った状態であるということを自覚できると思います。


睡眠不足は自覚が欠如するから危ない


ところが、6時間睡眠を2週間続けたグループのかたたちは、自分の疲労やパフォーマンスの低下を自覚できなかったようなのです。自分でも気づかないうちにパフォーマンスが低下していく、それが睡眠不足の怖さです。そうなると気づいた時には、肉体的にも、精神的にも大きな負担を抱えてしまっています。そして、事故や過労死へと繋がっていくようなのです。


6時間は寝ているから大丈夫は勘違い


「わたしは毎日6時間は寝ているから大丈夫」

このように思い込んでいるかた、本当に大丈夫でしょうか。生理的に身体が必要とする睡眠時間は人によってそれぞれですから、一概に6時間が少なすぎるとは言い切れませんが、集中力の低下による誤った判断、注意力散漫になり起こしてしまう事故。取り返しのつかない失敗は、睡眠不足でパフォーマンスが低下しているという自覚症状がない時にこそ起こりやすいということを覚えておいてください。



生物実験では睡眠がないと全滅

 

眠らないネズミは全て死んだ


強制的に不眠状態を強いられたネズミは、栄養を摂り続けていたにも関わらず11日~32日という時間の差はあったものの全てのラットが死に至ったことから、生物は眠らない状態が続くと死ぬとされてきています。


ショウジョウバエも眠らないと死滅


睡眠と死の関係について、ハーバード大学神経生物学科の研究チームが行った実験があります。研究チームは、ニューロンが熱に敏感になるように遺伝子改変したキイロショウジョウバエを暖かい部屋で飼育し「キイロショウジョウバエを眠れないようにする」という実験を行ったようです。

この結果、キイロショウジョウバエの不眠状態が10日以上続くと死亡率が急激に上昇し、通常ならば40日間の寿命を持つキイロショウジョウバエが20日で100%死ぬということが判明しました。キイロショウジョウバエにおいても「眠らない状態が続くと死ぬ」ことが確認されたのです。


睡眠不足は活性酸素を産生


研究チームが不眠状態が続いたキイロショウジョウバエの体内をくまなく調べたところ、腸内で活性酸素種と呼ばれる酸素分子に対する反応性が高い分子群が蓄積されることを発見したようです。 この現象が、キイロショウジョウバエ以外の生物でも発生するのかを調べるため、研究チームがマウスを使って追加実験を行ったところ、5日間不眠状態が続いたマウスの小腸と大腸にも活性酸素種が蓄積されていることが確認されました。このことから、異なる生物でも睡眠不足によって活性酸素種が腸内に蓄積されることは変わらないと研究チームは説明しているのです。


活性酸素を中和させれば睡眠不足でも死なない


「チームの全員が毎朝信じられない思いでキイロショウジョウバエを見ていました。腸内の活性酸素種を中和すれば、不眠のハエも生き続けたんです」とコメントしています。ただ、睡眠不足がなぜ腸内での活性酸素種の蓄積を引き起こすのか、活性酸素種の蓄積がなぜ死に繋がるのかということについては解明されていません。


眠りホルモンのメラトニンによって抗酸化


睡眠ホルモンとも呼ばれるメラトニン。メラトニンは非常に強い抗酸化作用を持つため、睡眠中に活性酸素を除去し、毛細血管の劣化と身体の酸化を防いでくれる働きがあります。同じ睡眠時間を確保しても、メラトニンがしっかり分泌された状態で眠るのと、分泌されずに眠るのとでは、疲れの取れ方も抗酸化力も大きな差がつくようです。睡眠の質という意味で考えるとメラトニンの分泌量が比例するようです。



どうやってメラトニンは分泌するのか


メラトニンは朝の光を浴びることで夜分泌される

メラトニンは、睡眠・覚醒リズムやホルモン分泌リズムなどの生体リズムの調整作用があります。このメラトニンは、夜になると多く分泌されて睡眠を促すのですが、この分泌には,

朝陽を浴びてセロトニンというホルモンを分泌することと相関しています。


朝の光を感じた情報が脳に届いてから、子供は約14時間後、大人は約16時間後にメラトニンが分泌されて眠たくなります。そしてこのメラトニンは、眠ってから約3時間後に分泌量が最大となるリズムを持っているようです。関連記事:睡眠の質をあげる基本知識


睡眠こそ生活の中心におくべき活動

 

睡眠は日常のあたりまえになっているので、どうしても軽んじて考えられがちな風潮を感じます。また睡眠そのものについても、まだ科学的に解明できていないことが多いことも、その風潮を助長しているのかもしれません。

けれども考えてみて欲しいのです。睡眠が不足している、あるいは自覚はないけれど不足していたらどうなるでしょうか。残念ながら本来持っている力を存分に発揮することができないのです、自分の力はこんなんもんじゃないはず、その背景には睡眠が大きく関わっています。


例えば「今日は奮発してステーキにしよう」と、食事では生活のなかでメリハリがあります。運動でもそうです、明日は休みだから少しハードなトレーニングで追い込んでおこうとか。睡眠についてはどうでしょうか、今日は奮発して質の高い睡眠をしよう、とかはできないのです。できるのは、休日だから寝れるだけ寝よう、という時間の量的なものだけ。 ただ残念ながら、1日で長時間眠ったとしても睡眠不足の蓄積は解消できないだけでなく、不規則な生活リズムはかえって体調を崩す原因になったりしますから注意が必要です。生活リズムは、睡眠の基ともなっている生体リズムに合わせることが求められます。そう考えると、健やかな生活を求めるのであれば、なによりも睡眠という活動を生活の中心に置くことが大切です。

睡眠は「すっきりした」という体感を大切に


3人に1人は悩んでいるという睡眠。厚生労働省の報告では、睡眠の悩みとして「睡眠途中に目が覚めて困った」「日中、眠気を感じた」「睡眠全体の質に満足できなかった」などが挙げられています。 参考:厚生労働省健康実態の調査


コロナ禍における日常生活の大きな変化によって、生活のリズムが乱れて睡眠に悩まれる方も多くいるようです。まだ睡眠については、解明されていないことが多いのも事実、ですから科学的根拠のない一般論だけに惑わされずに、自身の体感を基に「すっきりした」と感じられる睡眠を心がけてください。昼間にあくびがとまらない、集中力が続かないというのは、睡眠不足が原因だと考えられますので、自覚を持って睡眠環境の改善に取り組んでみてはいかがでしょうか。


自分に合った睡眠環境を整えよう


睡眠環境改善に直ぐに有効なグッズ


人生の1/3以上の時間を過ごすのがベッド(あるいは布団)。本質的な意味でのマイホームが寝室であり、ベッドなのです。この環境を機能的に改善することだけで睡眠の質は向上します。睡眠の質が向上すれば、疲労が回復できたり、免疫力が高まって病気になりにくい身体になったりと、生活全体の質が向上します。そして、なによりもグッズは今日からでも改善できる、もっとも簡単な睡眠環境改善法のひとつです。


脳を休めるためストレスのない枕

脳を休めることが大きな目的でもある睡眠にとって、枕はとても大切なグッズです。頭をしっかりと支えてくれながら、その高さや固さがストレスにならないもの、そして頭部の熱を放射できる通気性の高いものを選んでください。遠征の多いプロアスリートは、マイ枕を持参して睡眠環境を守っているということからも、睡眠における枕の大切さは理解いただけると思います。

そこでお薦めしたいのは「スタンフォード式最高の睡眠」著者であるスタンフォード大学医学部精神科教授/スタンフォード大学睡眠生体リズム研究所所長の西野精治医学博士がプロデュースしている枕です。 西野精治医学博士がプロデュースしているBRAIN SLEEPの枕はこちら

眠り始めの90分深く眠ることを目的にした枕 眠り始めの90分を深く眠ることができれば、その後の睡眠全体の質も向上するという考えの基に、入眠時の深部体温(体の内側の温度)を下げる事に着目し開発された枕です。脳の温度も深部体温と同じ動きを示しますので、就寝中に脳を冷やす(頭部の熱がこもらない)事で良質な睡眠を手に入れる事ができるようになると開発された、世界最高峰の科学的根拠に基づいた枕です。


睡眠は優先して質を高めるという意識へ


限られた時間のなかで、やるべきことややりたいことが沢山あると、ついつい睡眠時間を削ってしまいがちです。けれども、やるべきことを高い生産性で行うには、しっかりと睡眠をしなければ実現はできません。


仕事や趣味などに集中力高く、しなやかな行動でパフォーマンスを発揮するためには、なによりも優先して”睡眠の環境と時間をつくること”が大切です。睡眠は、疲れたから眠るのではなく、脳と身体の仕組みに合わせて積極的に質を高めていくということが求められています。


睡眠の質は生活の質(QOL=quality of life)に直結していますので、健康寿命を延ばすためには、日々行う睡眠について正しく理解し、「すっきりした」と感じられるような睡眠をとれるように心がけてください関連情報:健康寿命の課題と対応


Have a good sleep.



西村公志 睡眠健康指導士、健康管理士。 著書「感動できる柔らかなココロがマーケットを創造する」(アスペクト)。マーケティングコンサルタントとして活動するなかで法人経営者の健康管理における危機意識を感じ、正しい情報をお伝えできるようにと健康の中でも人生の1/4以上の時間を費やす睡眠と睡眠に関わる健康管理について学び続けている。


 

※できるかぎり最新の情報を基に更新を重ねているため、掲載初期のものから情報が更新されていることがあります、あらかじめご了承ください。

Comments


bottom of page