睡眠不足が慢性化することで一番怖いのは、本人に睡眠不足の自覚が欠如していることです。睡眠不足が積み重なってしまうと、集中力の欠如によって事故を起こしてしまったり、仕事でも簡単なミスを続けてしまったり。本人にも、気づかないうちに能力が低下してしまっていること、これが睡眠不足が積み重なった睡眠負債の怖さなのです。
睡眠不足の蓄積が招く心身への大きな負担
睡眠学の父デメント教授の睡眠研究
「睡眠負債(sleep debt)」という表現を用いて、積み重なる睡眠不足に警鐘を鳴らしはじめたのは、アメリカ人のウィリアム・C・デメント教授です。2020年に大きな功績と共に91歳で人生の幕を閉じられています。
写真引用: SLeepediA
スタンフォード大学睡眠生体リズム研究所の創設者で、今日の睡眠研究を牽引してこられたのがデメント教授です。レム睡眠を発見したシカゴ大学のクライトマン研究チームのひとりでもあり、急速眼球運動のある睡眠のことを「レム睡眠」と呼びはじめたのも、デメント教授だといわれています。
睡眠不足が重なると大きな負債となる
「人間は一定の睡眠時間を必要としており、それより睡眠時間が短ければ不足分がたまる。つまり眠りの借金が生じる」これを「sleep debt(睡眠負債)」と呼び、「借金がたまると脳や身体にさまざまな機能劣化が見られる。睡眠不足は危険である」とデメント教授は睡眠不足への警鐘を鳴らしました。
睡眠不足と睡眠負債の違い
では、睡眠不足と睡眠負債はどう違うのでしょうか。例えば、ここ数日仕事が忙しくて満足には眠れていないけれども、週末からは元通りの生活に戻れる、といった状態は睡眠不足です。不足している睡眠時間という状態が慢性化しておらず、一時的だからです。
写真引用: SLeepediA 睡眠負債とは、毎日毎日忙しくしていて睡眠時間が削られているのが当たり前になっている状態。毎日が6時間未満の睡眠時間がずっと続いているというような状態です。睡眠不足が慢性化してしまっている状態です。
睡眠負債が誘因となる生活習慣病などの疾患
睡眠不足の蓄積が、がん、糖尿病や高血圧などの生活習慣病、うつ病などの精神疾患、認知症など、さまざまな発症リスクを高めることが、各方面の研究結果から明らかになってきています。健康寿命の延伸が大きな社会課題となっている現代で、慢性的な睡眠不足の解消こそが一番取り組まなければならない課題なのかもしれません。
睡眠時間の計測研究によって判明した睡眠不足の実態
デメント教授が睡眠負債について説明するときに、よく用いていた実験結果があるようですのでご紹介させてください。1994年に行われた4週間におよぶ睡眠時間計測の実験です。
若くて健康な8人の被験者に、毎日同じ時間にベッドに入り、好きなだけ眠ってもらいます。ルールとして、眠れても眠れなくても、必ず毎日14時間ベッドで横になっていることを課しました。そして4週間にわたっての睡眠時間の変移を調べたのです。 最も典型的な被験者の場合、実験前の平均睡眠時間は7.5時間でした。はたして睡眠時間はどう推移するのか。実験初日は、ベッドにいなければいけないと決められた14時間のうち、13時間眠れたそうです。2日目も、13時間近く眠れました。ところが、日を追うごとに睡眠時間は減少し、1週間ぐらいすると、ベッドに入っても4〜5時間は眠れないようになったそうです。 これを続けたところ、3週間後には睡眠時間が8.2時間になり、それ以上睡眠時間が減ることはなくなったそうです。そこで固定したのです。このことから、この被験者が生理的に必要とする睡眠時間は、8.2時間であろうと判定されました。
写真引用: SLeepediA
健康で睡眠に特に問題はないということで実験に参加した人にも、実は約40分(実験前平均7.5時間→実験後平均8.2時間)の眠りの負債がありました。本人の睡眠不足という自覚がない中で負債は蓄積していたのです。そして、生理的に必要とされている睡眠時間に戻るまでに3週間もの時間を要したのです。
睡眠の負債は簡単には返すことができない
さらに見逃せないのは、毎日の約40分の睡眠不足状態から、自分にとって適正な睡眠時間に戻るためには、3週間もの時間を要したことです。たまった睡眠不足は容易に取り戻せない。だから負債となって蓄積されやすいのです。そこに留意してほしいと、デメント教授は一般の方向けの講演でこの実験のことを語っていたようです。
睡眠について世界最先端の科学的書籍
睡眠は個性があり、必ずしも一般論や平均が誰にでも当てはまるわけではありませんが、それでもデータの数量が大きければ信頼に足る指標となるのは事実です。そして、知らないよりも知っておけば必ず生活の知恵となります。
そんな睡眠についての著書をご紹介させてください。上記の実験結果についても詳しく掲載されているのは「スタンフォード式 最高の睡眠」です。著者は睡眠学の第一人者であるスタンフォード大学睡眠生体リズム研究所所長の西野精治博士です。スタンフォード大学は睡眠医学の研究においてはメッカともいわれていて、睡眠という不可解なものが、数々の研究によって解明されてきた科学的事実がここに記されています。 上手く眠れない、眠りに不安があるというかたには是非読んでいただきたい本です。知らずに悩むよりも、睡眠というものを科学的に理解すれば自分自身で改善のゴールというものがおぼろげながら見えるようになると思います。著書でも記されてはいますが、睡眠はまだまだ不明なことが多いのも事実です、でも科学的に解明していることがあるのも事実です。 ご購入はこちら
睡眠負債の本当の怖ろしさ
睡眠不足が慢性化することで一番怖ろしいのは、本人に睡眠不足の自覚が欠如していることです。睡眠不足は、心身のパフォーマンスを低下させてしまいます。睡眠不足のため集中力の欠如によって事故を起こしてしまったり、仕事でも簡単なミスを続けてしまったり。本人にも、気づかないうちに能力が低下してしまっていること、これが一番睡眠負債の怖ろしいところです。
睡眠こそ生活の中心におくべき活動
睡眠は日常のあたりまえになっているので、どうしても軽んじて考えられがちな風潮を感じます。また睡眠そのものについても、まだ科学的に解明できていないことが多いことも、その風潮を助長しているのかもしれません。
けれども考えてみて欲しいのです。睡眠が不足している、あるいは自覚はないけれど不足していたらどうなるでしょうか。残念ながら本来持っている力を存分に発揮することができないのです、自分の力はこんなんもんじゃないはず、その背景には睡眠が大きく関わっています。
例えば「今日は奮発してステーキにしよう」と、食事では生活のなかでメリハリがあります。運動でもそうです、明日は休みだから少しハードなトレーニングで追い込んでおこうとか。睡眠についてはどうでしょうか、今日は奮発して質の高い睡眠をしよう、とかはできないのです。できるのは、休日だから寝れるだけ寝よう、という時間の量的なものだけ。
ただ残念ながら、1日で長時間眠ったとしても睡眠不足の蓄積は解消できないだけでなく、不規則な生活リズムはかえって体調を崩す原因になったりしますから注意が必要です。生活リズムは、睡眠の基ともなっている生体リズムに合わせることが求められます。そう考えると、健やかな生活を求めるのであれば、なによりも睡眠という活動を生活の中心に置くことが大切です。
睡眠は「すっきりした」という体感を大切に
3人に1人は悩んでいるという睡眠。厚生労働省の報告では、睡眠の悩みとして「睡眠途中に目が覚めて困った」「日中、眠気を感じた」「睡眠全体の質に満足できなかった」などが挙げられています。 参考:厚生労働省健康実態の調査
コロナ禍における日常生活の大きな変化によって、生活のリズムが乱れて睡眠に悩まれる方も多くいるようです。まだ睡眠については、解明されていないことが多いのも事実、ですから科学的根拠のない一般論だけに惑わされずに、自身の体感を基に「すっきりした」と感じられる睡眠を心がけてください。昼間にあくびがとまらない、集中力が続かないというのは、睡眠不足が原因だと考えられますので、自覚を持って睡眠環境の改善に取り組んでみてはいかがでしょうか。
自分に合った睡眠環境を整えよう
睡眠環境改善に直ぐに有効なグッズ
人生の1/3以上の時間を過ごすのがベッド(あるいは布団)。本質的な意味でのマイホームが寝室であり、ベッドなのです。この環境を機能的に改善することだけで睡眠の質は向上します。睡眠の質が向上すれば、疲労が回復できたり、免疫力が高まって病気になりにくい身体になったりと、生活全体の質が向上します。そして、なによりもグッズは今日からでも改善できる、もっとも簡単な睡眠環境改善法のひとつです。
脳を休めるためストレスのない枕
脳を休めることが大きな目的でもある睡眠にとって、枕はとても大切なグッズです。頭をしっかりと支えてくれながら、その高さや固さがストレスにならないもの、そして頭部の熱を放射できる通気性の高いものを選んでください。遠征の多いプロアスリートは、マイ枕を持参して睡眠環境を守っているということからも、睡眠における枕の大切さは理解いただけると思います。
そこでお薦めしたいのは「スタンフォード式最高の睡眠」著者であるスタンフォード大学医学部精神科教授/スタンフォード大学睡眠生体リズム研究所所長の西野精治医学博士がプロデュースしている枕です。 西野精治医学博士がプロデュースしているBRAIN SLEEPの枕はこちら
眠り始めの90分深く眠ることを目的にした枕 眠り始めの90分を深く眠ることができれば、その後の睡眠全体の質も向上するという考えの基に、入眠時の深部体温(体の内側の温度)を下げる事に着目し開発された枕です。脳の温度も深部体温と同じ動きを示しますので、就寝中に脳を冷やす(頭部の熱がこもらない)事で良質な睡眠を手に入れる事ができるようになると開発された、世界最高峰の科学的根拠に基づいた枕です。
睡眠は優先して質を高めるという意識へ
限られた時間のなかで、やるべきことややりたいことが沢山あると、ついつい睡眠時間を削ってしまいがちです。けれども、やるべきことを高い生産性で行うには、しっかりと睡眠をしなければ実現はできません。
仕事や趣味などに集中力高く、しなやかな行動でパフォーマンスを発揮するためには、なによりも優先して”睡眠の環境と時間をつくること”が大切です。睡眠は、疲れたから眠るのではなく、脳と身体の仕組みに合わせて積極的に質を高めていくということが求められています。
睡眠の質は生活の質(QOL=quality of life)に直結していますので、健康寿命を延ばすためには、日々行う睡眠について正しく理解し、「すっきりした」と感じられるような睡眠をとれるように心がけてください。関連情報:健康寿命の課題と対応
Have a good sleep.
西村公志 睡眠健康指導士、健康管理士。 著書「感動できる柔らかなココロがマーケットを創造する」(アスペクト)。マーケティングコンサルタントとして活動するなかで法人経営者の健康管理における危機意識を感じ、正しい情報をお伝えできるようにと健康の中でも人生の1/4以上の時間を費やす睡眠と睡眠に関わる健康管理について学び続けている。
参照:厚生労働省 睡眠と健康 参照:日本睡眠学会
参照:スタンフォード式最高の睡眠 参照:東洋経済オンライン 日本人が知らない睡眠負債の恐怖 医療機関:日本睡眠学会 専門医
※できるかぎり最新の情報を基に更新を重ねているため、掲載初期のものから情報が更新されていることがあります、あらかじめご了承ください。
Comentários